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2008年7月11日 (金)

 私の最も古い記憶は、たぶん三歳ぐらいの時のものだ。
 私は三輪車に乗って遊んでいた。田舎の兼業農家の庭は、三輪車には十分な広さがある。きこきこきこきこ門の近くまでペダルをこいできた時、ふと門の外に出てみたくなった。それできこきこきこきこ三輪車で外にこぎ出した。

 突然視界が開けた。進む方向の制限もない、底なしの広がりが目の前にあった。農地規制のある平野の風景は、空が限りなく広い。幼い私は、家をほんの2メートルほど出た所で、広い空に圧倒されてしまった。同時になぜだか家の中に戻れないような不安を感じた。実際三輪車の行動範囲は限られている。それでまたきこきこきこきこと、出てきた時より一生懸命にペダルをこいで、門の内側へと戻っていった。

 それ以来、同じ思いを繰り返しながら生きているような気がする。大体一人で三輪車をこぐのが好きなので、危険な目に遭いやすい。それでも空の不安を受け止めることぐらいはできるようになってきた。だからひょっとしたら若かった頃より人生を楽しめるようになっているのかもしれない。空の不安をそのまま受け止めながらそれとふれあう。毎年同じことを繰り返しながら、それが次第に「楽しみ」に変わっていく…。自分が未熟者であることの不安は、これからさらに成熟していくことの期待に変わる。

 若い頃は40歳を過ぎた自分など想像もできなかった。年をとるのも悪くない。

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