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2008年12月26日 (金)

「羊をめぐる冒険」

 村上春樹さんの作品の中で最も好きなのはこれかも知れない。

 3回読み直したが、実は2回目まで完全に間違った解釈をしていた。
 (ネタバレ注意)
 2回目まで私は作品の仕掛けにそのままだまされて、主人公は本当に「ネズミ」を追いかけていると信じていた。だから「羊男」が登場するラストシーンあたりの展開が全く理解できなかった。それなのに初読から「羊男」にひかれた。なぜ自分が「羊男」にひかれているのかさっぱりわからなかった。わからなかったのに好きになった。深夜の時計の音と共に登場する「羊男」。

 いくつかの短編を読んだり教科書教材になっている作品を授業した後にようやく気付いた。主人公は自分自身を追いかけていたのだと。そして、自分の心の中の「羊男」と冬の北海道で決別する。なぜ3回読むまでわからなかったのかということ自体が今では理解できないが、読む人の心の準備も必要な作品ということなのかも知れない。

 夏目漱石の作品に似ていると感じたこともある。その理由をあれこれ考えていた。ある時何かの授業で二人を比較して、「彼らは時代の雰囲気に最も敏感な作家たちだ。」などと知ったようなことを語ったが、自分でも納得いってなかった。

 たぶん彼らは、自分の心に徹底的に忠実に作品を書いたのだろうと今では思う。そうせずにはいられなかったのかも知れないが。
 

追記

 この作品の影響で、朝起きたら熊のぬいぐるみを頭にかぶってしまっていた少年を主人公とした短編を書いたことがあります。(とても人に見せられるようなレベルではありませんが^^;)「熊男の住処」の「熊男」はそこから来ています。「狼男」と「羊男」の中間ですね。まあ、笑ってやって下さい。

 

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