« 「羊をめぐる冒険」 | トップページ | あけましておめでとうございます! »

2008年12月30日 (火)

『無常という事』

 たぶんまだ中学生の頃だったと思う。「これがわかるか」と親父が私に読ませたのが、この小林秀雄の『無常という事』」だった。当時小林秀雄は大学入試に出題される作品の頻度ナンバーワンだったので、まあ少しは国語が得意らしい息子を、親父は試してみたかったのだろう。正直さっぱりわからなかった。読んだ後で感想を聞かれたが、適当に答えておいたら、親父にほんの少し困ったような顔をされたのを覚えている。

 最近、何かの際にふと思い出して読んでみた。驚くほど最初に読んだ時と印象が変わっていた。読むたびに印象が変わる本は他にもたくさんあるが、この作品については、かなり極端である。正直中学生にわかるはずがないと思った。さらには当時の親父にこれが正確に理解できていたかどうかも疑わしい気がする。

 「正確」という言葉を使ったが、なにが「正確」な解釈なのかも正直自信がない。その都度その都度読んでいる際に、「今の読みが正確なのだ。」と感じているだけなのかも知れない。今の私の読みのパラダイムを圧倒的に支配しているのはいうまでもなく現象学と記号論だ。大体これらのパラダイムにどっぷりつかってしまってからは、身の回りのほとんど全てをこれらのフィルターを通して見てしまっている気がする。

 『無常という事』には「過去から現在まで飴のようにつながった時間など存在しない」と書いてある。(記憶だが…)。明らかに共時的な時間意識がそこにある。大体これの意味がわかる中学生がどこにいるというのだ。

 しかし今の自分と中学時代の自分は、自分が感じているほど理解力に差は無いのかも知れない。違いがあるとすれば、自分を縛っている「ものの見方」を少しは外から眺められるようになっているということだけかも知れない。「メタ認知能力」がほんの少し向上したというべきか。(最近「メタ認知」ははやりみたいで、あちこちで目にしますが…正直私はこの用語を使いこなしている自信はありません^^;)。いつか、いまの「ものの見方」に替わる新しいパラダイムに出会うのだろうか。来年以降も自分の身になにが起きるのか楽しみである。

|

« 「羊をめぐる冒険」 | トップページ | あけましておめでとうございます! »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/216436/43576130

この記事へのトラックバック一覧です: 『無常という事』:

« 「羊をめぐる冒険」 | トップページ | あけましておめでとうございます! »