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2010年3月18日 (木)

「自己意識」(2)-「音」をベースにした複数の「ハウリング」-

 実際に「思考する」とはどのような意識の状態なのだろうか。

 例えば私は国語のセンター試験の解説をする時などに、まず自分で真剣勝負で解いてみる。これがまた情けないことになかなか満点が取れない。満点取って生徒に、「やればできる」ということを証明したいので、毎回必死で解く。満点を目指すためには当然のことながら問題本文を隅から隅まで理解しなければならない。それで本文を気合いで読んでいく。ところが、何しろセンター試験の問題に使われるような文章だから、いい加減に読んでいるとすぐに、そこまで読んできたはずの展開を忘れてしまう。書かれてある言葉を全て丸暗記するわけにもいかないから、いくつか重要なキーワードを絞り込んで、それを心の片隅に置いたまま、さらにさらに次の行…といったようにどんどん読んでいく。そうすると頭蓋骨の裏側に「重要キーワード」がどんどん七夕の短冊みたいに垂れ下がっていくような状態になる。

 何かについて「思考する」ことは、これに似ているのではないか。
 目の前の実体としての「現実」から、視覚や聴覚に刺激を受けるだけの条件反射だけで「思考」している人はおるまい。何らかの刺激を外部から受けながら、記憶その他の内部からの関連情報も刺激となって「思考」が作られる。
 
 この時、脳内で起きていることは、まさに音楽である。まず外部からの刺激がある。特に「音」の刺激は、最も恒常的な「時間」情報として、頭の片隅で一定の「流れ」とリズムとを刻み続ける。これまで私が説明してきた表現をそのまま流用するなら、脳みその中に「音」の刺激によるニューロン相互の太い「ハウリング」が一本、保たれている。
 そのリズムに乗るように、様々な他の知覚情報や記憶の想起によって、ニューロン相互の複数の「ハウリング」が脳内に生み出される。そしてジャズのようにリズムに支えられながら、ハウリングが生まれては消え生まれては消える。
 いわば王冠の上部にある複数の出っ張りに、輪ゴムを一本ずつ掛け渡していくようなものだ。「音」による太い輪ゴムが一本必ずかかっている。思考が複雑になるにつれ、輪ゴムの数が増えていく。この比喩をそのまま使って表現するなら、思考力のある人物とは同時に多くの「輪ゴム(ハウリング)」を頭の中にかけることができる人といえるかも知れない。また、発想力に優れた人とは輪ゴムを誰も思いつかなかった組み合わせでかけることができる人といえるかも知れない。
 これらの輪ゴムが、ニューロンの単発の発火ではなく、「ハウリング」であることには必然性がある。なぜなら、ある概念についての想起が一定以上の時間持続しなければ(つまりニューロンの発火状態が持続しなければ)、それについて脈絡のある思考などできるはずがないからである。
 おまけだが、この複数の輪ゴムがかかっている状態は、「ツイスター」という遊びにたとえることができるかも知れない。「思考力のある人」とは、頭の中での「ツイスター」の名手と言えるかも知れない。(※「ツイスター」について知らない方はネットで検索でもしていただきたい。ツイッターではありません。)

 最終回「自己意識」(3)では、そのようなニューロンの発火による複数の「ハウリング」において、「言語」がどのような役割を果たしているか考えてみたい。

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