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2012年2月15日 (水)

 何となく思い出したことがあるので書いてみる。
 多分雨が降っているからだろう。
 自己カウンセリング系の話なので、つまり極めて個人的な話なので、そういうのが苦手な人は読まない方が良い。

 十代の終わり頃に右のまぶたの手術をした。前にも書いたが私は生まれつき右目が眼瞼下垂だった。右目だけまぶたの筋肉がほとんど動かず、半分片目を閉じたままで生活していた。
 それを小学校に上がる前に手術してまぶたを切ったが、治った後手術跡が盛り上がったようになっていた。そのまま少年期から青春期の大半を過ごした。女の子が自分の右に座っただけで緊張するぐらいだったから、少なからず私の人格に影響を与えていたのは確かだ。
 
 大学一年の時に大学病院に三週間ほど入院して再手術をした。軽度の障害ということで保険が下り、三週間飯付きで4万円ちょっとですんだ。
 局所麻酔だったので、手術そのものがなかなか強烈な体験だったが、ここでは細かい描写はやめておく。親知らずを抜いたことがある人は大体どんな感じか想像つくだろう。

 手術が終わって二日後ぐらいだったが、執刀医だった大学の先生から術後の検査を受けたとき、「うん、よし、これでいい。そろそろ鏡を見てもいいよ。」と言われた。それで病室に戻ってから、恐る恐るガーゼをはがして自分の新しい顔を見てみた。

 これはかなりこたえた。皮膚にメスを入れているわけだからそれは傷を受けたに等しいわけだ。しかも、手術中眼球を守るためだったのだろうが、目に直接何かが押しつけられていて、眼球全体が内出血したように真っ赤に染まっていた。タコの目というものがどんなものか絵に描けと言われてもそらでは描けないが、その時の私はなぜか「タコの目」という表現を思い浮かべていた。
 病室に戻ると、外は雨だった。取り返しのつかないことをしたと、自分を責めた。なぜ前の顔を捨てたのか、なぜわざわざこんな顔を手に入れようなどと思ったのか。

 私はそれからしばらく鏡を見ようとしなかった。一週間ぐらいたって、また先生の部屋に行き検査してもらった。ガーゼを取って部屋の中を移動している時に、奥にあった鏡に自分の姿がちらっと映った。見たことのない人物がそこにいた。右目と左目が左右対称の。眉毛を大きくつり上げなくても、目が開いている。またちらりと見た。見間違いではなかった。

 別になにかの教訓話として書いたわけではない。ふと思い出して、書いてみたくなったから、書いてみた。一度言葉にしておきたかったのだと思う。本当に雨のせいかもしれないが。

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