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2013年11月10日 (日)

フラッシュラグ効果

 今日の朝BSで放映されていた「ガリレオX」の「内なる時計の謎」を見ていて、そういえば「フラッシュラグ効果」について思ったことをブログ化していなかったなあと思い出した。

 「こころの時間学」という科研費研究が行われているらしいという話を以前このブログで書いた。それについて特集している『BRAINandNERVE(8月号)』という専門誌を買って読んだのだが、そこでもこの「フラッシュラグ効果」が話題となっていた。

 「フラッシュラグ効果」にはいろんなタイプがあるようだが、今日の「ガリレオX」の例がわかりやすいのでそれを説明する。

 リンゴの絵がテレビ画面を左から右に横切っていくアニメーションが表示される。背景は単色のシンプルなものだ。リンゴが画面の真ん中に来た時、その瞬間だけ一コマ分、リンゴの真下に矢印が表示される。テレビは一秒に30コマ表示されるから、一コマの表示時間は約0.03秒ということになる。それだけの短さでも矢印は問題なくはっきりと見える。
 ところが、リンゴの真下で表示されているはずの矢印が、リンゴがほんの僅か通過した後に遅れて表示されているように見えるのだ。コマ送りして確認しても確実にリンゴが真上に来た時だけ一コマ表示されているのに、通常のスピードで見ると、何度見てもリンゴが通過してしまった後に遅れて表示されているように見える。

 拙著『時間認識という錯覚』の枠組みで、この「フラッシュラグ効果」がなぜ起きるのかを簡単に説明できる。

 そもそも自然界の通常の存在が、突然現れて突然消えるとなどということはほとんどない。通常の出来事のほとんど全ては流れの中にあり、事物の「動き」もそのような流れの中にある。
 「時間認識という錯覚」の中で私は、ある瞬間の直前の状態の「残像」とその瞬間の「実像」との二つが我々の脳内でステレオグラム的に合成されることによって、我々が認識する「動き」が生まれてくると説明した。

 リンゴが画面の真ん中に来た時、直前のコマの一つ左にずれた場所のリンゴの「残像」が我々の脳内に残っている。それらが合成されることで、脳内でリンゴの「動き」が認識されている。
 ところが矢印は、リンゴが真ん中に来た瞬間0.03秒しか表示されないため、合成されるべき「直前の残像」を持たない。もしこれが、サブリミナル効果のように他の映像刺激の中の一コマであれば、人はその矢印を認識することさえもできないはずだ。他の映像刺激が創り出す「流れ」によって押し流されてしまうはずだ。しかし、背景がシンプルな単色系であるため、網膜レベルに残った視覚残像がほんの僅かだけ遅れて脳内に入ってくる。最初の視覚情報としての脳内に残る「残像」に対して、網膜から脳内に遅れて入ってくる視覚情報が擬似的な「実像」として機能し、ステレオグラム合成がほんの僅か遅れて成立する。

 それで、画面を横切るリンゴに対して、一瞬しか表示されない矢印は、ほんの僅か遅れて表示されるのだ。

追記

 「BRAINandNERVE」には「サッカーのオフサイドに誤審が多いのはフラッシュラグが理由であるという説もある」(913)とあるが、私はそうは思わない。この記事で説明したように、一瞬表示される物(上記の例では「矢印」)の背景が単色か暗闇といったシンプルなものであることが「フラッシュラグ効果」の条件だろうと考えるからだ。

 『時間認識という錯覚』の第一章、第二章で書いたことだが、我々は脳内で、完全なステレオグラム合成と不完全なステレオグラム合成を使い分けることで、動く物と静止している物とを区別しながら生活している。この時、滝の流れが、背景の岩場に視点を置くか、流れる水に視点を置くかによって、「流れ」自体のかすれの度合いが異なってくるように、必ずしも静止物に対して完全なステレオグラム合成がなされているわけではなく、その都度その都度状況に応じて切り替えながら生活している。
 サッカーの審判も、ボール、複数の競技者、サッカーのフィールド等の複数の視覚像に対して、脳内での「完全なステレオグラム合成」の対象を切り替えながらオフサイドの判定をしているはずだ。誤審はおそらく、複数の対象に対してステレオグラム合成のするしないを切り替える最中に生じる。実際のプレーの状況によって、審判が注視すべき対象が次々に入れ替わるから、パターン化され得ないからだ。
 

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