« フラッシュラグ効果 | トップページ | 小林秀雄 『無常ということ』の授業 »

2013年11月17日 (日)

量子とは何か(7)-量子群から粒子群への相転移-

 日経サイエンスの記事「光子の逆説」がきっかけで始まったこのシリーズだが、例によって風呂敷は広がるだけ広がってしまい、「量子は球状の波」という発想で「重力とは何か」についても説明可能になるといった壮大な物語になりつつある(…)。

 無限遠にまで達する球状の波である量子が、最も収縮して粒子化した状態で密集したのが物質である。その際に周囲の空間から「リソース」を奪い一種の「疎」の空間を創り出している。そして「疎」の空間同士が一種の負圧となって互いを引き込み合うのが「重力」であるとこれまで戯言を語ってきた。

 このシリーズの(6)の記事で、重力場が球状を保つためには物質を構成する粒子それぞれがすさまじい勢いで伸縮(振動)し続けることが条件になるはずだと述べた。しかし、これには理屈の上で弱点がいくつかあった。

 一つは、なぜ量子が粒子化した状態を保つことができるのかということである。このブログではこれまで「他の粒子の間にはまりこむ」だとか「密集状態の中でランダムに『量子もつれ』を引き起こして粒子状態を保ったまま伸縮を繰り返す」だとかいった説明を繰り返してきたがどれも説得力のあるものにはなり得ていなかった。

 もう一つは、この理屈だと物体を構成する粒子がどのような状態にあるのかによって、重力場の状態が変化してしまう。極端にいえば、もし物質を構成する粒子の全ての伸縮タイミングが合ってしまったら重力場は小刻みに変動することになる。このブログの戯言パラダイムに従えば、それは同時に質量が小刻みに変化することを意味する。(ただし光速レベルで伸縮する「球状の波」の話なので、数億分の一秒といった計測によって初めて明らかになる程度の変化ということになるが…)

 大栗博司さんの『強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』(幻冬舎新書)に南部陽一郎さんがノーベル賞を取った「対称性の自発的な破れ」の説明があった。以下はその引用である。

「広い体育館の中にたくさんの人々が並んで立っていると思ってください。この体育館は完全な円形で、壁には時計もなければバスケットボールのゴールやステージもありません。したがって、どちらを見ても風景は同じ。つまり回転対称の状態です。
 特別な方向がないので、そこに立っている人々はどちらを向いてもよさそうです。ところが彼らは付和雷同しやすい性格で、周りの人たちと同じ方向を向きたがる。最初はバラバラの方向を見ているのですが、その中の何人かがある方向を向くと、周囲もそれにつられて同じ方向を向くようになります。その結果、体育館そのものは回転対称なのに、そこにいる人々がすべて同じ方向を向く。回転対称性が自発的に破れているのです。」(P181)

Narabu_4

「体育館の中にいる人たち全員が同じ方向を向いているときに、一人だけあらぬ方向を向くのはいろいろな意味で大きなエネルギーが必要です(図28)
Hitori_5

しかし、ほんの少しだけ首を左右に振ることは簡単にできるでしょう。長い間同じ方向を向いているのに疲れた人が、少し首を動かしてみる。そうすると、それにつられて隣の人も首を少しだけ振る。そのまた隣の人もまた首を振る……という具合に首振りの動作がさざ波のように伝わっていく(図29)。Jyunban_2

一人だけで別な方向を向くのは大変ですが、首振りのさざ波を起こすためにはあまりエネルギーはいりません。さらに、さざ波の波長を長くしていくと、首振りの方向がゆっくりゆっくり変わっていくので、波を起こすためのエネルギーをいくらでも小さくすることができます。」(P191~192)

 この理屈は、本ブログの戯言パラダイムにとって非常に都合が良い。

 物質の構成要素である粒子は、本来は一つひとつ「無限遠にまで達する球状の波」である。本来は「体育館の中に集まった人」と同様、「回転対称」であるべきだ。つまり、それぞれの「球」は伸縮状態がばらばらなはずである。
 それが「対称性の自発的破れ」によって相転移を起こし、一斉に同じリズムで伸縮を始める。それは、「付和雷同しやすい性格」の体育館の人々が「周りの人たちと同じ方向を向きたがる」ようなものだ。
 しかし、密集した粒子群が同じ伸縮をするためには、粒子化するために必要な周囲の空間の「リソース」が足りなくなる。それで自然に「首振りの動作がさざ波のように伝わっていく」。すなわち粒子に近い状態を保ったままの短いスパンの伸縮が、物質を構成する量子群全体でさざ波のように寄せては返す。

 その結果として、量子が粒子化する際に周囲の空間から「リソース」を奪って生まれた「疎」の空間が「無限遠まで広がる球状」を恒常的に維持できるようになる。粒子群の「振動」にも似た伸縮が、伸張途中の粒子と収縮途中の粒子とで平均化し、球状に安定しているような見かけになる。それが重力場の正体であると。

 いや小説みたいなものなので…^^;

追記

 引用させていただいている本を読んで初めて南部陽一郎さんの「対称性の自発的破れ」が理解できたような気がします。(このブログの記事は、はったりですが…)。

|

« フラッシュラグ効果 | トップページ | 小林秀雄 『無常ということ』の授業 »

「時間意識」戯言」カテゴリの記事

量子シリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« フラッシュラグ効果 | トップページ | 小林秀雄 『無常ということ』の授業 »