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2016年3月12日 (土)

宇宙創生直前 ― 時間と空間の対称性 ―

  ちょっと前に書いた「時間の矢」の続きである。補足説明と言うべきか。

 前の記事で、光子(ボゾン)について、それが半永久的に振動する球状の波であるという前提で、言わば現在を中心に過去と未来にむかって交互に振動しているようなものだと述べた。つまり、光子しかない世界においては時間さえも対称性が保たれていると。

 ところで、空間についても、完全な意味では対称性が保たれているとはまだ言えない。前の記事で、我々の認識する時間に対称性がないとすると、時間はいつ始まったのかという問題と対決せざるを得なくなると述べた。それと同じように、空間、つまり宇宙に「果て」があるなら、その果ての向こうはどうなっているのかという問題との対決が避けられない。そしてそれは本質的な意味では解かれていない。

 ところが、今世紀初めにポアンカレ予想という数学の難問が証明された。それについてはこれまでも拙ブログで話題にしてきた。
 その予想が証明されることで、宇宙が(数学的には)前後左右上下がつながり合っている「三次元球面」という構造を持っている可能性が生まれてきた。分かりやすく言えば、宇宙のどの方向にでもまっすぐに進んでいけば、いつか出発した場所に逆の方向から戻ってくるという構造だ。

 そのような「三次元球面」構造を持つ宇宙の中心で、球状の振動が起きるとする。その振動は全方位に向かって広がっていく。距離の二乗に反比例して、そのエネルギーは減少していくが、無限に近い宇宙の果てでもと来た方向の逆の側に回り込み、振動の中心点に集まってくる。凝集してくる。

 つまり、「三次元球面」構造を持つ宇宙では、それぞれ全ての場所が宇宙の中心である。このブログ記事でこれまで述べてきたように、光子(ボゾン)を空間の球状の振動と見なしたとき、一つ一つの光子それぞれが宇宙の中心であるとさえ言える。

 宇宙がそのような構造であることを暗示する観測結果が二つある。
 一つ目は、最近話題になった宇宙背景放射であり、「ビッグバンがあったことの証明」と騒がれたが、なぜ宇宙の全方位からほぼ均等に地球に向かってマイクロ波が届いているのかは謎であるらしい。
 二つ目は、ハッブルが発見した、宇宙の全ての星々が遠くに行くほど地球から急速に遠ざかりつつあるという有名な観測結果だ。これまた「ビッグバンの証拠」としてよく話題になるが、やはりなぜ我々のいる地球を中心に全宇宙が遠ざかりつつあるのか説明が付かないらしい。まるで地球は宇宙の中心であるかのようだ。

 宇宙全体の構造を「三次元球面」とし、全ての物質の根源である素粒子を「空間の球状の振動」と捉えれば、地球が宇宙の中心であるかのような観測結果の、全てが説明可能になる。

 そんなふうに考えれば、宇宙創生直前の様子も、イメージ可能になる。

 宇宙には始め、光子しかなかった。つまりある一点を中心として全方位に向かって球状に振動する存在である。それらは「三次元球面」という閉じた構造を持ち、波が重なり合うことはあっても本質的な意味では干渉し合わないように、それぞれが完全に独立した一つの宇宙を構成していた。言わば、無限に近い数の「宇宙」が重なり合って存在していた。このような世界では、時間も空間も完全な対称性を保っており、振動すること以外には「変化」さえも存在しなかった。それが「宇宙創生直前」の状態である。

 そのような完全な状態に、ある時偶然に寄り添った複数の光子(ボゾン)が、共振(もしくは量子もつれ)を起こして、フェルミオン化する。(これについてはこのページで説明済みである。)つまり対称性が自発的に破れる。

 その瞬間、時間の対称性が破れ、時間の矢が発生し、我々にとっての「宇宙」が始まった。 
 
 
 

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