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2018年6月29日 (金)

ベイビードライバー-無意識に引き継いだもの-

超絶ネタバレ注意。

 冒頭部分のカーチェイスが見事で、いきなり物語世界に引きずり込まれる。天才ドライバーである主人公ベイビーは、銀行強盗達の「逃がし屋」としてWRXをまるで猫科の動物が草原を走り回るように駆け回らせるのだ。

 ところで、そのシーンはいきなり全力バックから始まる。銀行強盗達を乗せたスバルのWRXは、そのままバック発進して、180度ターンして、パトカー達との追いかけっこを始める。

 その後も、「バックダッシュ」は何度も何度も繰り返し出てくる。

 二回目の視聴の最中に、ようやくバックダッシュに「意味」があることに気づいた。主人公は幼い時に交通事故にあって両親を亡くしている。車の前部座席に座った両親は、口論に夢中になっていて道路の真ん中で立ち往生するトラックに気がつかなかったのだ。

 彼は事故のフラッシュバックに悩まされ続けながら、車を盗んでは逃走するという行為を繰り返す。全力で後ろに逃げ続ける。自分の心の中の「迫り来るトラックの荷台」から逃げ続ける。当然のことながらその行為は永遠に報われることはなく、彼の心は事故の当日に張り付いたまま成長を止めてしまう。しかし、ある出来事がきっかけとなって、彼はようやく失われた人生、失われた母親への思いを取り戻す機会を手に入れるのだ。

 実際、人生はそういうもんだろう。

 人は誰でも、人生のどこかに気づかないうちに自分の心を置き忘れてしまっている。そして、それを取り戻すチャンスを追い求めているのだろう。

 私自身はどうなのだろうかと考えていて、今まで一度も考えたことのなかった発想が突然頭のなかに浮かび上がった。ベイビードライバーの隠されたテーマにエディプスコンプレックスがあるのは間違いないが、それは当然私にも当てはまるものであるにちがいない。しかし、突然浮かんだ「発想」というのはそんなありふれたものではなかった。

 それは、ひょっとしたら、私は私の父親の無意識の願望を引き継いでいたのではないかということだ。

 私の父親は私と同じ職業だが、その職種としては十分と思われる栄達を果たしている。一方の私は彼の生き方に対して嫌悪に近いものを感じており、まるでその逆を意識的に選択してたどるかのような人生を送ってきた。
 しかし、父親は自分の生き方を本当に望んで選択していたかどうか今から考えれば疑わしいと思われる節がある。父親は実際には自分の人生を嫌悪していて、私はそれを無意識のうちに引き受けていたのではないかと。

 自分のことは自分が一番分かっていないものだ。この「発想」が正しいかどうかなど分かるはずがない。しかし、これを思いついた時の奇妙な安堵感が、一種の自己カウンセリングとして私の心に作用しているのは事実である。そういう意味では真実に近いところにあるのではないかとは思うが。

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