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2018年7月31日 (火)

嫁がほしい、が、しかし…

 2018年7月、首藤家は滅亡しようとしていた。

 ここしばらく増えもせず、減りもしなかった首藤家だが、ついに親父が倒れた。アラフィフになった子供三人には一人も子供はいなく、つまり親父はじいさんになることができないまま、今年の3月脳溢血で倒れ、一時はもって一週間だろうという状態にまでなった。
 
 CTを取ったところによれば、親父はこれまで小さい脳溢血をなんども繰り返していたらしい。馬鹿な長男があれやこれやで彼の神経を逆なでしつづけてきたので、まあ無理もないといえば無理もないのだが。

 それでもさすがは現代の医学、そのまま数ヶ月小康状態を保ち、一時は会話もままならない程だったが、少しは言葉が聞き取れる程度には回復した。しかし、さすがの馬鹿息子も、自分のこれまでの悪行を振り返るぐらいの精神的なダメージは受けていたようだ。

 親父はまあ強烈な親だった。(まだ生きてるし、まだ17年間は生きるそうだが…)
 
 息子と一緒で感情表現の下手な父親は、下手同士息子との精神的なすれ違いを繰り返した。だからといって息子が影響を受けていないはずがなく、同じ大学の同じ学部学科に行って、同じ職業を選んだ訳だから、まあ意識無意識を問わず、息子は生涯を通じて親父のマインドコントロール下にあったとさえ言える。

 そんな息子の最後の砦みたいなものが「嫁」だった。誰が見てもわかりやすく親父のコントロール下で予定調和的な人生を歩んできた息子は、「嫁」ぐらいは自分の力で手に入れようと、数十年にわたって「最後の抵抗」を試み続けてきた。その結果は惨敗につぐ惨敗。そもそもが感情表現が下手なうえに人望もなく、さらには人を好きになるとあからさまに挙動不審に陥るというわかりやすい性格のおかげで、ついにはアラフィフまで30年以上もの月日を一人で生きるという、まさかまさかの人生を送りつつある。

 まるで別人のようになってしまった自分の親の姿を眺めながら、息子はなぜだかこれまで好きだった何人もの女性のことを思い出していた。なにしろアラフィフだから当然好きだった女性なんて数えきれないぐらいいる。すでに息子の知っている(強烈な)親父はどこかの彼方に消え失せてしまい、疑似喪失感によってアイデンティティの混乱状態にあったとさえ言えそうだ。まるで疑似思春期である。

 誰かが好きだという感情の上位に、「嫁がほしい」という感情が来たのは半世紀以上の人生で始めてかも知れない。いつ失われるかも分からない命に対する人的保証のようなものかもしれない。

 問題は、息子の人生が全く落ち着いていないということだ。息子は突然世界漫遊に出発して行方不明になるかも知れないし、シニアプロテニスプレイヤーとしてデビューするかも知れない。つまりは自信を持って自分を売り込むことができない状態のまま30年も結婚適齢期をはるかに超えて生き続けている。そんな状態のまま、息子の人生は終わりつつある。そんな奴をもらってくれる嫁はまあいないよな(終わり)

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